アジャイル開発の現況調査報告 ~ローコード開発現場で期待されているアジャイル開発の実態~(vol.7)

  • 公開日:2022年08月22日(月)

近年企業への普及が世界的に進んでいるアジャイル開発は、ローコード開発と組み合わせることで大きな成果が生み出せると期待されています。
ローコード開発プラットフォームであるOutSystemsでは、トレーニングコースの一つにアジャイル開発手法を採用しています。
アジャイル開発はソフトウェア開発手法の一つで、固定長の反復期間ごとに小単位の機能を継続してリリースすることで、市場への提供を素早く、要求の変更を柔軟に対応できます。
ローコード開発は少ないコード記述で素早く柔軟なシステム開発を実現できるという特徴があるため、アジャイル開発と組み合わせることで相乗効果を生み、柔軟性の高いシステム開発やアジリティの向上を促進させることが可能となります。

そこで本ブログでは、ローコード開発と親和性が高いとされるアジャイル開発に焦点を当て、2021年に実施したアンケート結果をもとに、国内のアジャイル開発の現況について、最新の動向をご紹介します

*本ブログに記載のアンケート結果は、プロジェクトマネジメント学会アジャイルPM研究会が2021年8月に実施したアンケート『日本におけるエンタープライズ・アジャイル導入組織の最新状況について』をもとに考察しております。

アジャイル開発アンケート結果①:回答者の属性

回答者が所属している会社の業種としては、多くがベンダー企業に属していることがわかります。
また所属している企業の従業員数は幅広い回答が見られました。
*本アンケートは、9社11名の方にご回答いただいております。

<回答者の属性>

<回答者が所属する企業の従業員数>

アジャイル開発アンケート結果②:アジャイル開発手法

採用しているアジャイル開発フレームワークは「Scrum」が最多であることが見て取れます。
また大規模なエンタープライズアジャイル開発向けに採用しているフレームワークは「SAFe」が最多となりました。

<採用しているアジャイル開発フレームワーク>

<大規模なエンタープライズアジャイル開発向けに採用しているフレームワーク>

アジャイル開発チームの体制について、アジャイルのチーム数は「11チーム以上」が最多となりました。
また、チームの平均人数は「3~6名」と「7~9名」が多いという結果となりました。

<アジャイル開発のチーム数>

<アジャイル開発1チームあたりの平均人数>

アジャイル開発の成果物に対する品質について、アジャイル開発向けの評価基準の有無は下記図の通りその他開発標準と同じという回答が多く、各開発フェーズのレビュー方法は「インスペクション」や「ウォークスルー」が中心でした。

<アジャイルの成果物に対する品質についてアジャイル開発向けの評価基準の有無>

アジャイル開発のトレーニングは幅広い対象者に対し実施され、実施タイミングについても開発開始前、開発初期、開発中と幅広く、教育期間は数日が多いという結果となりました。

<アジャイル開発のトレーニング対象者>

<アジャイル開発のトレーニング実施時期>

<アジャイル開発のトレーニング期間>

アジャイル開発の導入が多いチーム管理ツールは「Jira Software」、コミュニケーションツールは「Slack」、継続イテレーションツールは「Jenkins」が最多でした。

<アジャイル開発におけるチーム管理ツール>

<アジャイル開発におけるコミュニケーション管理ツール>

<アジャイル開発における継続イテレーションツール>

アジャイル開発に導入しているプラクティスは下記図の通り様々な回答が見られました。

<アジャイル開発に導入しているプラクティス>

アジャイル開発アンケート結果③:プロジェクト特性

プロジェクトの金額規模については下記図の通り1000万円未満から10億円以上と幅広い回答が見られました。

<アジャイル開発プロジェクトの金額規模>

プロジェクトのスケジュールに関して、プロジェクトの期日が「あり」は8割以上を占め、期日の期間としては3ヶ月~6ヶ月未満と1年~2年未満が半々で、イテレーション期間は2週間が57.1%と最多でした。

<アジャイル開発プロジェクトの期日の有無>

<アジャイル開発プロジェクト全体の期間>

<アジャイル開発プロジェクトのイテレーション期間>

契約形態は下記図の通り外部委託(受注・外注)している契約が複数回答可で100%となりました。

<アジャイル開発の契約形態>

プロジェクトの見積りについて、全体予算策定やプロダクトバックログの全体見積りは「機能見積り」が最多であるのに対し、イテレーションバックログでは「相対見積り」が最多でした。

<アジャイル開発プロジェクト全体の見積方法>

<アジャイル開発プロジェクトのプロダクトバックログ見積方法>

<アジャイル開発プロジェクトのイテレーションバックログ見積方法>

アジャイル開発アンケート結果④:課題

アジャイル開発を実施する中で挙がる課題は下記図に示す通り様々で、「エンタープライズアジャイル開発の進め方がわからない」、「投資効果が測定できない」、「参加メンバーの意識統一やトレーニングができない」、「経営陣との情報共有ができない」「ユーザ部門の協力が得られない」などが挙げられました。

<アジャイル開発の課題>

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回はローコード開発と親和性が高いとされるアジャイル開発に焦点を当て、2021年に実施したアンケート結果をもとに国内のアジャイル開発の現況について最新の動向を紹介しました。

ローコード開発とアジャイル開発の親和性が高いとされている理由として考えられるのは、アジャイル開発によってローコード開発がもつ柔軟性を活かせることが挙げられます。
そもそも、アジャイル開発は短いサイクルで小単位に分けた機能の開発を進めるため、開発中でも仕様変更を受け付けてビジネス環境の変化に俊敏に対応できます。
アンケート結果のアジャイル開発の導入理由に「ビジネスアジリティの向上」が見られることからも、アジャイル開発はビジネス環境の変化に対応できる柔軟性を有していることがわかります。
また、ローコード開発は少ない工数での開発を可能とするため、急な仕様変更にも比較的短期間で実装できるという特徴があります。
上記で示したローコード開発とアジャイル開発それぞれが持つ柔軟性を組み合わせることで、ビジネスの環境変化に伴う仕様変更にも強い柔軟なシステム開発を実現が期待できます。

さらに、ローコード開発には、システム開発の技術的ハードルを下げることでユーザ部門も開発に携わりやすくなるという利点もあります。
アジャイル開発の課題として、「ユーザ部門の協力が得られない」ことがアンケート結果にも挙げられていますが、ローコード開発を取り込むことで、ユーザ部門とシステム部門が協力し合う開発が可能となるでしょう。

以上、アジャイル開発の現況調査の結果をもとに、ローコード開発とアジャイル開発の親和性の高さに紐づく相乗効果を考察してみました。
今後のローコード開発へのアジャイル開発導入に際し、本ブログが検討材料の一助になれば幸いです。

電通総研では、ローコード開発プラットフォーム:OutSystemsの導入・活用を支援する様々なサービスメニューをご用意しております。
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ローコード開発プラットフォーム:OutSystemsの導入をご検討の際は、是非、電通総研へお声掛けください。
 https://itsol.dentsusoken.com/outsystems/

本記事は、2022年6月1日時点の情報を基に作成しています。
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