ローコード開発 とは? ~LCDPはシステム開発の救世主となりうるのか?~(vol.1)

  • 公開日:2021年10月18日(月)

ローコード開発とは、アプリケーション開発を行う際のコード記述(プログラミング)の量を大幅に削減することで、開発生産性を高めるための開発手法です。
“少ないコード記述”により、システム開発のスピードがあがります。また、人の手で記述する部分が減るとバグの発生ポイントが減少し、システム品質があがります。結果、システム開発コストが抑えられます。良いことずくめのように聞こえますが、落とし穴はないのでしょうか?

2021年10月現在、金融機関のシステムトラブルが話題となっていますが、システム開発/運用で苦労されている企業にとって、このテクノロジーはシステム開発の救世主になるのでしょうか?

本ブログでは、昨今話題のローコード開発やローコード開発製品選定のポイントについて、これからのシステム開発のあり方を交えて解説します。

 

ローコード開発 とは? ~どのようなモノを指すのか?~

先述の通り、ローコード開発とは、アプリケーション開発を行う際のコード記述(プログラミング)の量を大幅に削減することで、開発生産性を高めるための開発手法です。
このローコード開発を可能とする製品は世の中に複数存在しますが、それらは一般的にどのような機能を有しているのでしょうか?

一般的にローコード開発製品は統合開発環境(IDE = integrated development environment)を有しており、このIDEにより「直感的な操作」でアプリケーション開発することができます。開発ツール上に開発に必要となる部品、画面テンプレートおよび他システムとのAPIなどが用意されており、画⾯デザインや業務ロジック/データ構造といった設計情報を“⼊⼒するだけ”で、ツールがアプリケーションを⾃動⽣成します。設計情報の⼊⼒の多くはGUIのソフト部品をマウスのドラック&ドロップで操作し、設定情報を打ち込む程度です。プログラミングの作業がほぼ発⽣しないため、⼈的エラーが混⼊しにくく、⼿戻りの低減が期待でき、開発⼯程の⼤幅な短縮につながります。データと画⾯の整合性や設定モレを防ぐ⽀援機能が充実している製品が多く、⾼品質なシステムを開発することができます。

ローコード開発製品は開発環境だけを提供するものと、開発したアプリケーションが稼働する環境として、データベース、インフラを含めたプラットフォームとして提供する製品があります。
このプラットフォーム製品を「ローコード開発プラットフォーム(Low Code Development Platform:以下LCDPという)」といいます。

また、LCDP製品の中にはライフサイクル全般を管理する機能を有する製品があります。その製品は開発環境/テスト環境/本番環境など複数環境を管理し、開発したアプリケーションを安全にリリースする機能を持っています。

ローコード開発 とは? ~どのような期待を集めているのか?~

ローコード開発を検討されているお客様から、以下のような期待をよく耳にします。

<お客様から耳にするローコード開発への期待>

  • レガシーシステムを多く抱えているお客様:
    レガシーシステムのリプレイスにローコード開発を活用し、開発コストを抑えたい

  • ERP周辺のアドオン開発が多いお客様:
    ERPのリプレイス、バージョンアップ時に周辺のシステムをローコード開発で行い、ERPの開発スケジュールに遅れない短納期開発と開発コスト削減ができるようになりたい

  • システム開発が可能な情報システム部員は多数いるが、システムが乱立し、OS/ミドルウェアのバージョンがバラバラでシステム保守に多くの時間が割かれてしまっているお客様:
    同じプラットフォーム上でシステムを構築し、効率よくシステム保守ができるようになりたい

  • 将来のIT要員不足の懸念から、システムの内製化を進めたいお客様:
    プログラミング経験が少ないIT部門の要員でもシステム開発ができるようになりたい

  • 現場のDXを推進したいお客様:
    様々なデバイスで、SNSなどと連携したアプリ開発を進めたい
    現場ニーズに迅速に対応するようアジャイル開発ができるようになりたい

 

ローコード開発 とは? ~これからのシステムのあり方とは?~

では、ローコード開発というこのテクノロジーは、前章で述べた期待に応えられるのでしょうか、これからのシステム開発の救世主になり得るのでしょうか?

現実的には、非常に複雑なロジックや超ハイパフォーマンスが求められる処理では、ローコード開発ツールでは要求どおりの性能が出ないリスクがあります。また、社会的にミッションクリティカルなシステムに、新しいテクノロジーであるローコード開発を採用することは難しい点もあると思います。

では、なぜローコード開発が注目を集めているのでしょうか?
そのひとつにDX (デジタルトランスフォーメーション) の推進が挙げられます。
変化の激しい今、現場のビジネス要件に対して迅速かつ柔軟に対応する必要が生じています。2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」では、現在多くの企業がDXの推進を阻む課題を抱えており、レガシーシステムの全面的な見直しや刷新を行わないままでいると、DXが実現できないばかりか、2025年以降で最大12兆円/年 (現在の約3倍) の経済損失が生じる可能性があると指摘しています。いわゆる「2025年の崖」と言われるものです。DXレポートで指摘しているDXの推進を阻む課題として、「レガシーシステムの課題」 「IT人材不足の課題」 「ユーザーとベンダーの関係性の課題」の3つが挙げられています。ローコード開発でこれらの課題をすべて解決できるわけではありませんが、企業がDXを推進する中で、有効な手段のひとつとして脚光を浴びているのがローコード開発なのです。

ローコード開発による生産性の高さが、既存のレガシーシステムの再構築を加速します。また、アプリケーション開発の技術的なハードルが下がれば、システム開発・保守の内製化が進み、IT人材の不足に対応できるかもしれません。システム開発・保守の生産性が高まることで、コスト軽減が可能となり、セキュリティやデータ保持における適切な対応や、新しいIT投資を行うことが可能になります。このような期待から、ローコード開発は、活用次第ではシステム開発の救世主の1つになるかもしれませんが、あくまで1つのソリューションとして考えるべきだと思います。

企業は、DXを推進するなかで、IT戦略を立案し、IT資産ポートフォリオの中で低付加価値領域には汎用パッケージ・SaaSを、高付加価値領域にはローコード開発プラットフォームなどを適材適所で使いこなすことが求められると思います。また、ローコード開発プラットフォームを利用する場合、その投資対効果を最大化するためにITロードマップを策定し、有効な展開方法を計画することも重要だと思います。

 

ローコード開発 とは? ~どのように製品を選ぶべきか?~

それでは、「ローコード開発の期待効果」と「これからのシステム開発におけるローコード開発の現実的な活用方法」を正しく理解した上でローコード開発にトライしたいお客様は、どのように自社に適したローコード開発製品を選べばよいのでしょうか?

現場の簡易なシステム開発で利用する場合、利用者がITリテラシーの低い方を想定すると、システム間連携などに機能制約があったとしても、グループウェアのようなローコード開発製品やコーディングをまったく必要としないノーコード開発製品を選択することが考えらえます。

また、開発したシステムをどのデバイスで利用するか、WEBアプリケーションだけを想定しているのか、スマホやタブレットのネイティブアプリまで想定しているかによっても対応できる製品と対応できない製品があります。

ローコード開発プラットフォームとしてインフラ環境まで提供している製品がありますが、システムをクラウド環境で使うか、オンプレミス環境で使うかによっても選ぶ製品が異なります。

キャンペーン用のアプリなど、1回の開発で用途を終えるものなら開発に特化した製品で十分です。実際、市場に多く出回っているのは、開発特化型の製品です。一方、企業が業務システムを運用していく場合、アプリの開発だけでなく、本番環境へのリリースから、稼働管理や変更管理などの運用、さらには追加開発の要求まで、ライフサイクル全般をサポートする機能が求められます。

市場には数多くのローコード開発を謳う製品が存在しますが、それぞれ有する機能が異なりますので、どのようなユーザーを想定し、どのような業務領域のシステムにローコード開発を適用したいか、それによって製品を見極めて選定する必要があります。

 

ローコード開発 とは ? まとめ

本ブログでは、昨今話題のローコード開発やローコード開発製品選定のポイントについて、これからのシステム開発のあり方を交えて解説して参りました。

ここまで読んでいただいた通り、ローコード開発は魔法の杖ではありません。システム領域のカバー範囲は広くても、全てのシステム領域に適合できるテクノロジーではありません。あくまで“どこにローコード開発を適応するか”が重要になります。

変化の多い業務領域/新事業領域で、システム開発/変更を高速に行うにはローコード開発は適しているでしょう。しかし、業務領域に適したパッケージやSaaSがあれば、そちらを利用することをお勧めします。

また、ローコード開発は誰でも開発できる技術ではありません。プログラミング言語を使わなくても、IDEを使いこなすスキルは必要となります。データベースをはじめ、ある程度のITリテラシーとトレーニングは必要になります。

それでも、少子高齢化が進む日本においてDXを推進する上では、システム開発の生産性向上は欠かせない取り組みであり、ローコード開発製品を検討しない手はないと思います。

電通総研では、ローコード開発プラットフォーム:OutSystemsの導入・活用を支援する様々なサービスメニューをご用意しております。
ローコード開発プラットフォームの活用を前提としたITロードマップ策定から、ローコード開発プラットフォームのPoC支援、CoE支援によるローコード開発プラットフォームの導入・活用、ローコード開発プラットフォーム上の受託開発など様々なご支援をさせていただきます。
ローコード開発プラットフォーム:OutSystemsの導入をご検討の際は、是非、電通総研へお声掛けください。
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本記事は、2021年10月18日時点の情報を基に作成しています。
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