プロセスマイニングでデータを活用した一歩先の業務改革を!(vol.34)

2023.05.29

序章

プロセスマイニングとは、各種システム上に記録されている出来事(ログ)から、一連の業務・作業におけるすべての流れ、プロセスのバリエーションをデジタルで再現し分析することで、現実に起きている業務プロセス全体を可視化し、適合性チェックやプロセス強化を行うための方法・技術・ツールのことです。

従来の現場ヒアリングによる業務改革では時間と人手がかかり、本来自動化すべき業務も見落としてしまうことがありました。プロセスマイニングを行うことで、データを活用した自動化すべき業務の抽出ができ、効率よく一歩先の業務改革を行うことができます。

本ブログでは、プロセスマイニングを行うことによって何ができるのか、導入する場合の注意点、RPAとの親和性を中心に解説いたします。

プロセスマイニングとタスクマイニングの違い

プロセスマイニングとタスクマイニングはお話をしているとよく混同される方がまだ多い印象です。ではプロセスマイニングとタスクマイニングの違いは何でしょうか。

プロセスマイニング:
「ビジネスプロセスの実行ログ(システムの実行ログ)」を分析して、プロセスの流れやパフォーマンスを可視化する技術

タスクマイニング:
「ユーザーの画面操作を記録」して、タスクの内容や効率を把握する技術

プロセスマイニングは、プロセス全体の最適化や改善に役立ちます。タスクマイニングは、個々のタスクの自動化や簡略化に役立ちます。一般的にプロセスマイニングで業務全体でのボトルネックや改善点を把握し、その個別作業の深堀の1手法としてタスクマイニングがあるというように考えた方がわかりやすいでしょうか。つまり両者は、ビジネスプロセスの異なるレベルに着目していますが、相互補完的な関係にあると考えるとよいと思います。

プロセスマイニングで発見できる課題

プロセスマイニングでは具体的にどのような課題を発見できるのでしょうか。代表例を解説します。

1)プロセスの可視化からみられる課題

・非効率化プロセス

ツールによって該当するプロセス自体が自動的にワークフロー化されるため、プロセスを100%捕捉できます。それによって従来行っていたプロセスの無駄な部分を簡単に洗い出すことができます。

・ボトルネック

プロセス内のそれぞれの作業でどれくらい時間がかかっているかを捕捉できるため、プロセス内のボトルネックとなっている作業を発見することができます。

・リソース

上記ボトルネックの内容を作業者別に分析することによって、リソース毎の(作業者・システムなど)作業効率性等の分析を行うことができます。

・繰り返し行われるプロセス

プロセス内でよく行われる繰り返しプロセス、例えば伝票差し戻し等、についても確認することができます。繰り返し行われるプロセスには何か根本的な原因があるはずです。

2)標準プロセスからみられる課題

・標準プロセスから逸脱したプロセス

多くの企業ではプロセスには「規定された順序」=「標準プロセス」があるはずです。プロセスをデータから可視化することによって、標準プロセスから逸脱したプロセスを発見することができます。

これらの課題をそれぞれ根本原因分析し、対処方法を判断することになります。

対応方法としては以下が一例として挙げられるでしょう。

  • プロセスの再構築
  • 要員の適正配置、要員教育
  • RPAによる業務効率化
  • BPM
  • BPO
  • プロセスの厳格化
  • その他システム化 等

プロセスマイニングの注意点

プロセスマイニングを行う際の注意点とは何でしょうか。代表例は以下の通りです。

1)導入目的を明確にすること

プロセスマイニングを実施する前に、分析対象となるプロセスの範囲と目的を明確に定義することが重要です。プロセスの範囲は、何を軸としてどのようなアクティビティやケースを含めるか、どこからどこまでを分析するかなどを決めることです。つまり、「何を見たいのか」をはっきりとすることです。プロセスの目的は、分析のゴールや成果物、利用者や利益相手などを決めることです。これはプロセスの範囲と目的に応じて、適切なデータや指標、視覚化方法などを選択する必要があるためです。

2)データの品質、量、整合性は担保すること

プロセスマイニングは、追跡したいデータ項目をキーとして、単一・複数のシステムログを統合したり、外部からのデータを紐づけしたりすることで、分析用データを作成します。そのため、イベントログが正確で完全であることが重要です。不正確や不完全なデータは、プロセスの分析に誤りやバイアスをもたらす可能性があります。また、複数のシステムやアプリケーションからデータを取得する場合は、データの整合性や一貫性にも注意が必要です。例えば、タイムゾーンや日付形式が異なる場合は、データ変換や統合が必要です。またデータが十分な量であることも必要です。データが少なすぎると、プロセスの全体像やバリエーションを把握できない可能性があります。

3)プロセスの複雑さと変動性

プロセスマイニングは、プロセスの流れやパターンを可視化し、ボトルネックやムダな活動を発見することができます。しかし、プロセスが複雑すぎると、分析結果が理解しにくくなることがあります。また、プロセスが頻繁に変化する場合は、分析結果が古くなってしまうこともあります。そのため、プロセスの複雑さや変動性に応じて、分析対象や方法を適切に選択することが必要です。

4)分析結果の活用方法

プロセスマイニングは、プロセスの現状を客観的に示すことができますが、それだけでは改善にはつながりません。分析結果をもとに、具体的な改善策を立案し、実行し、効果を測定することが必要です。また、分析結果を関係者に共有し、コミュニケーションや協働を促進することも重要です。そしてプロセスマイニングを一過性の分析にとどめずリアルタイムもしくは定期的に分析していくことが非常に重要です。

プロセスマイニングとRPA

前述の通り、RPAはプロセスマイニングの原因分析後の対応方法の1つとなります。プロセスマイニングとRPAの組み合わせによって、次のような効果が生まれます。

1)RPA導入妥当性の客観的判断

RPAの導入や業務への適用にあたり、導入の担当者は現場へのヒアリング等を通常行いますが、そこには個人的なバイアスが入りがちです。プロセスマイニングで発見した定量的な数値的根拠に基づいてRPA導入の客観的判断を行うことができます。

2)案件ディスカバリーや業務ヒアリングの簡素化

RPAの導入を進めていくと、やがて対象業務が枯渇し現場からのアイデアや提案が少なくなってきます。プロセスマイニングを活用すれば、ブラックボックス化している業務や作業を掘り起こして、非効率な業務・作業(RPAの対象範囲)の抜け漏れを防ぐことができます。ヒアリングによる調査だけでは、プロセスマイニングのように網羅性を担保することは難しく、プロセスマイニングの導入を検討する理由のひとつとなるでしょう。

3) 導入効果の継続的なモニタリング

RPA導入後の効果測定はRPAの永遠の課題です。現場へのヒアリングだけでは実質的な効果を正確に図ることは不可能です。プロセスマイニングを継続的に実施、モニタリングすることによってRPA導入前後での効率(時間短縮)が把握できます。そうすることで導入したRPAの改善や廃止等に関する定量的なデータの1つとなります。

まとめ

これまで述べてきた通り、プロセスマイニングを行うことによって、自社の業務が可視化され、定量的に分析することが可能となり、企業にとっては様々なメリットが生まれます。

その一方でプロセスマイニングはコスト高であるというイメージがあることも事実です。これはプロセスマイニングがRPAなど自動化ツールのように成果のイメージが湧かないため導入効果を明確に提示することが難しく、費用対効果がわかりづらいことも一つの要因かもしれません。

コストが気になる場合はスモールスタートがお勧めです。まずは小さな業務プロセスから始めて可視化し、確実な効果が見えてきたところでこれまでの知見を踏まえて、さらに導入の輪を少しづつ広げていくのがよいでしょう。

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