ローコード開発基盤の選び方 稼働環境から考えてみよう
序章
あれ、これ出来ない?稼働環境による意外な落とし穴
近年、プログラミング経験のない人でも少ない学習コストでソフトウェアを開発できる「ローコード開発基盤」が注目を集めています。これは、専門知識や高度な技術がなくても、直感的な操作でアプリケーションを構築できるプラットフォームです。ビジネスシーンでも、ローコード開発基盤を用いて業務システムを構築するケースが増えています。
しかし、ローコード開発基盤を選択する際には、見逃しがちなポイントがあります。UIの使いやすさや機能性はもちろん重要ですが、非機能要件や環境制約も見落とせない要素です。例えば、「クラウドサービスを利用しようとしたところ、会社のセキュリティポリシーで取り扱いデータに制限があった」というような事態が発生するかもしれません。これらを考慮せずにローコード開発基盤を選択すると、後々問題が生じる可能性があります。
本記事では、特にローコード開発基盤が稼働する環境に焦点を当て、失敗を避けるための選択の勘所について解説します。
ローコード開発基盤の稼働環境の選択肢
SaaS
まず、選択肢としてセールスフォースや弊社サービスのiPLAss Cloudなどのシェアードサービスがあります。これらは、サーバー構成などが隠ぺいされているサービスとして提供されています。特徴としては、使いはじめのリードタイムが早いこと、どこからでも使えること、利用費の中にライセンスやサーバー費用まですべて含まれていることです。ただ、シェアードサービスであるがためにシステム間連携や性能など個別要件には応えられないことがあります。
SIer管理環境でのフルマネージドなサーバー
利用者からするとフルマネージドなサービスであり、SaaSに近いのですが、サーバーを何台、といった形でSIerにきめ細かくインフラ構成を指定することができます。外部に運用をお任せできるので使い勝手はSaaSに近いのですが、自社環境ではないので、セキュリティ的な制約、例えば自社のファイル共有やDBと連携をしたい、といったことは難しい場合があります。SIerという他の組織が所有するインフラ環境であるため、制約がでてくることがあります。
いわば、SIerのクラウド環境といえるでしょう。オートスケールなど拡張性を重視するのであれば、専用サーバーを用いるSIerの管理環境を用いるべきでしょう。また、実態としては自社専用の環境をSIerに委託している形態ですので、OSのバージョンアップなど運用に伴う作業費が上乗せされている形になります。
自社環境内での専用サーバー
ベンダーに運用を任せず、自分たちで運用する組織もあるでしょう。ベンダーお任せだと、ベンダー側の環境のレギュレーションで、思ったような環境が構築できないこともあります(たとえば、VPN接続など)。個人情報など会社のルールに沿って厳格に扱いたいデータがあるなど、自社から出せないデータがある場合は、自社環境で専用サーバーを運用することが選択肢となります。自社でインフラエンジニアを抱える必要がありますが、コストをかけて守らなければいけないデータがあるならこれしかありません。
Salesforceは自社環境で動かすことはできませんので、サーバーに導入できるソフトウェア型のローコード製品を採用する必要があるでしょう。
ローコード開発基盤を決めるための勘所
取扱いデータの機密性と会社のセキュリティポリシー
ここまで、ローコード開発基盤の稼働環境について選択肢を見てきました。一方で、その選択肢が会社のセキュリティポリシーに適合しているかどうかを慎重に検討する必要があります。特に機密データを扱う場合には、インフラ環境の仕様や運用に大きな制限が設けられていることがあります。例えば、認証、ネットワーク制限、データの暗号化などが挙げられます。
昨今、多くのローコード開発基盤がクラウド上でサービス提供されていますが、手軽さからクラウドに飛びつくと、会社のセキュリティポリシーに合致しておらず利用許可が得られないような事態が生じることもあります。もちろん、クラウド上でのサービス提供がセキュリティ上劣るというわけではありませんが、まずは会社のセキュリティポリシーと稼働環境の仕様を十分に確認することが重要です。
データ連携方法
取り扱うデータを全て画面から手入力するだけならあまり問題にはなりませんが、他システムから自動連携したい、大量データを一括で登録したいなどの要件がある場合には、それを実現できる環境であるかを確認することが重要です。APIで提供されるケースが多いのですが、DBに直接連携したいなど、システムによって要件は変わってきます。場合によっては専用のネットワーク網を引かないといけないケースもあるでしょう。その場合、SaaSやSIerが管理するインフラ環境が対応しているか確認するとよいでしょう。
ライセンス形態
ローコード開発基盤の製品の多くは、ユーザ数ベースのライセンス形態となっています。中には、環境やオブジェクトの数で加算される製品もあります。一方でサーバーCPUベースの製品もあります。使い方によって、費用が変わってきます。利用アプリの数やデータ件数が大きくなったり、全社的に展開するとユーザ数が増えてライセンス費用が増えてしまったりと、断念するケースもあるでしょう。どういった利用の仕方か予測して、自社に一番あったライセンス形態の製品を検討するようにしましょう。
拡張性
ローコードプラットフォームのインフラのリソース拡張性はどうみればよいでしょうか。CPU・メモリ性能やデータ容量といったリソース観点や、キューによるシステム連携やサーバーレスのイベント処理など構成観点で拡張ができるか検討する必要があります。リソースは、自社、SIer環境によらず、IaaSやPaaSを扱えるパブリッククラウドであれば対応しやすい課題です。システム連携やイベント処理は、SaaSによっては設計の制約を受けることもあります。
システム運用・保守
どんなレベルで運用保守をするか、最初に検討しておく必要があります。SaaSはすべてお任せになりますが、自社で運用する場合、当然ながら自社に運用体制が必要となります。運用部隊とのコミュニケーションが少ないと、せっかく開発したローコードアプリの運用を引き受けてもらえないかもしれません。プロジェクト当初から関係者として巻き込む必要があります。
SIerの管理環境に任せる場合も、サーバーやDBのバージョンアップ作業など、月額費用以外に費用が発生するサービスもあります。この点はSaaSとは異なりますのでよく確認したほうがよいでしょう。
どこの環境でも運用できるローコードプラットフォームがあります
弊社製品iPLAssでは、これらどの環境でも運用することができます。iPLAss Cloudでは、SaaSのようにすべて運用をお任せしたり、グレードの高いメニューであれば、SIer管理型のようにきめ細かくサーバー構成、台数を指定したりすることもできます。また、オンプレミスのデータセンタに導入することもできます。OSはWindowsとUnix/Linux、DBMSはOracle、SQL Server、PostgreSQL、MySQLなど幅広く対応しています。
詳しくは以下のリンクをご覧ください
https://itsol.dentsusoken.com/iplass/about-iplass/
まとめ
「ローコード開発基盤の選び方 稼働環境から考えてみよう」と題し、ローコード開発プラットフォームの稼働環境について見てきました。コストに優れ、カスタマイズに制限があるのがSaaS、コストはかかるが最大限に環境をカスタマイズできるのが自社管理環境、その中間といえるのがSIer管理環境と覚えておきましょう。
また、ローコード製品を導入する際、インフラ環境のセキュリティや拡張性も気になるポイントでした。使い方によってはライセンス費用が変わってくるため、一概にSaaSのコストが低いともいえません。SIer管理環境、自社管理環境でもコスト試算してみるとよいでしょう。
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